第32回 株式会社アレックスソリューションズ

社員の国籍は20カ国近く。「バックパッカー精神」あふれる留学生を

世界的企業から引き抜かれるITエンジニアへ育成(前編)

語学力に長けたITエンジニアを育成し、顧客企業に常駐して海外企業との橋渡し役を担うグローバルエンジニアリング事業、および顧客企業の海外進出をサポートする海外研修事業で成長を続けるIT企業。代表取締役CEOの大野雅宏氏が同社を設立したのは2007年。当初から「留学生を活かす」を経営理念として掲げ、留学経験者や海外経験者、日本に留学してきた外国人に絞って社員を採用することで、独自の強みを伸ばしてきた。東京港区の本社のほか、シンガポール、スリランカにもオフィスを持つ。2018年5月時点での社員数は153人。社員の国籍は、日本、アメリカ、韓国、中国、インド、スリランカ、ネパール、ブラジル、 ナイジェリア、イギリス、フランス、シンガポール、ベトナム、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ドイツ、ミャンマーと実に多様。

◇就職で評価されなかった悔しさが原点。経営理念は「留学生を活かす」

「留学生を活かす」。アレックスソリューションズのこのユニークな経営理念は、大野雅宏代表の個人的な経験にルーツがある。

 

「大学生時代にエジプトのアレクサンドリア大学に2年間ほど留学し、帰国後は留学で身につけた語学力を活かして働こうと考えていたんです。ところが、就職活動をしても、留学経験をなかなか評価してもらえず、希望する就職はできませんでした。このときの悔しい思いが当社の事業の原点です」

大学卒業後、塾講師として働いていた大野代表は、その後友人の誘いでIT企業の営業職に就く。その営業活動の中で、顧客から「英語ができるITエンジニアはいない?」と打診される機会が頻繁にあった。しかし、該当する人材は数が少なく、いたとしても料金が高い。一方、大野代表自身がそうだったように、留学などの海外経験はあっても、希望する就職ができずに、フリーターなどでくすぶっている若者は世の中にたくさんいる。また、語学力が活かせると思って就職したものの、その機会が実際にはほとんどなく、転職を考えている層も少なくない。大野代表はここにビジネスチャンスを見出した。

 

「海外大学への正規の留学でなくても、短期大学への留学やワーキングホリデー、バックパッカー、あるいはJICAの青年海外協力隊などで海外経験を重ねた人たちは、現地の人と込み入った交渉もできるくらいの活きたコミュニケーション力を習得しています。語学力やバイタリティという点では十分通用する潜在能力を持っている。しかし、彼らにはビジネス経験がなく、当然ながらITスキルもありません。それなら、そこを研修で補おうと」

 

基本的なビジネスマナーとITスキルなら、集中して意欲的に学べば短期間で身につけることは可能。そう考えた大野代表は、ITスキルは問わず、留学・海外経験のある人材を募集。CCNAというネットワーク技術に関する資格取得とビジネスマナーの修得、また、留学から期間が経っている人のために英語力の回復を図る夜間9週間の研修プログラムを作成し、内定者に入社前受講させる。内定者からすると無料で研修が受講でき、会社側からすると研修期間は給料負担がないWin-Winの仕組みだ。当時は海外にサーバーを置く企業が増えている時期で、トラブルがあった際などは現地のエンジニアと国内のエンジニアが英語でやり取りをする必要が生じる。これに対応する仕事であれば、それほど高度なIT知識は必要とされない。むしろ求められるのは語学力だ。大野代表は当初はこの業務にターゲットを絞って営業。その狙いは当たった。

 

◇留学・海外経験者の「バックパッカー精神」はIT業界で重宝される

「彼らには海外経験を通して身につけた強みがあるのに評価してもらえなかったというコンプレックスがありますから、その思いをバネに、研修には本気で取り組みます。だから、まったくの未経験からでも実務で通用するレベルまでのスキルアップは十分可能でした。すると、今まで企業に門前払いされていた人たちが 『英語×IT』という希少価値の高い人材に生まれ変わるわけです。また、当社の社員は、必然的にバイタリティに溢れるタイプが多く、これがIT業界では異質なキャラクターとして重宝されることもわかりました。人と打ち解けるのが得意ですし、トラブルがあって、パニックに陥るような状況でも何とか乗り切る力も海外経験を通して養っていますから」

このように同社では決して『英語力』というスキルのみに注目して人材を募っているわけではない。同社の業務では、海外に積極的に飛び出していくバイタリティやさまざまな経験によって培われた人間的な力もすべて活かせる。同社では、これを求める人物像として「バックパッカー精神」と呼んでいる。単に「英語ができる人」ではなく、「留学経験・海外経験がある人」を募集し、グローバル化が進むIT企業が抱えるニーズとの理想的なマッチングを実現しているのだ。

 

ここ数年は、日本に留学したものの、その経験を活かす就職ができなかった外国人の採用も増やしている。また、スリランカでは、日本語を学ぶスリランカ人を現地採用。「島国であるスリランカの人々のコミュニケーションは日本人に近い」と大野代表。外国人採用に関しても企業間の競争が激しくなるなか、競合が集中するインドではなくスリランカに着目するあたりがアイデアマンの大野代表らしい。現在は社員の1割程度が外国籍。冒頭に掲げたように社員の国籍は20カ国近くとなり実に多様だ。

 

一般的には、このように外国籍社員が増えてくると、組織にとってはダイバーシティマネジメントが重要な課題になってくる。文化的背景や価値観が異なる人たちが集まることにより、組織の中心を占める日本人との齟齬や軋轢が生じやすいからだ。しかし、アレックスソリューションズにはそのような問題は特に起きていないという。

 

「当社の日本人社員はもともと海外経験を通して異なる文化や価値観を受け入れる素地はできています。常駐先で日本人社員と外国籍社員がチームを組むこともありますが、コミュニケーションはスムーズですね。海外にいるのと同じ感覚なので、彼らには自然なことなんです」

なお、組織としての一体感を醸成するために、月に一度、社員が本社に戻る「帰社ウィーク」を設けている。エンジニアを派遣する企業の多くは、帰社日を設けていても、1日で設定しているのが一般的で、その日が忙しい社員は参加できない。そのため、同社では5日間のうち都合の良い1日に帰社できるように工夫。20人程度の単位で、それぞれ英語を使ったゲームやランニング会などさまざまなイベントを通して社員同士の交流を図っている。また、年に3回は全員が集まる社員総会(上写真)を実施。常駐先での勤務がメインでも、社員同士が顔を合わせる機会は豊富だ。

 

~中編に続く~

 

構成/伊藤敬太郎

 


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