第9回 株式会社VOYAGE GROUP

オフィスはまるで海賊船!若手も経営会議参加OK!

停滞ムードから働きがいNo.1企業への改革物語(前編)

「SSP fluct」などのアドテクノロジー事業、「ECナビ」などのメディア事業を中心とするインターネット事業を幅広く手掛ける“人を軸にした事業開発会社”。1999年、現代表取締役社長兼CEOの宇佐美進典氏が創業(当時の社名はアクシブドットコム)。2001年に株式会社サイバーエージェントの連結子会社化。今回インタビューした青柳智士氏は、サイバーエージェントを経て、2008年に入社(当時の社名はECナビ)。2009年にCCO(最高文化責任者)に就任し、経営理念、オフィス環境、人事制度などを全面的に刷新する企業文化構築に取り組んだ。その過程の2011年、社名を株式会社VOYAGE GROUPに変更。2012年にはサイバーエージェントからMBOによって独立し、2014年に東証マザーズへ上場、2015年には東証一部に市場変更。従業員数は約370人(2016年5月現在)。

◇ 「働きがいのある会社」ランキングNo.1に輝いた注目企業

社内に一歩足を踏み入れると、海賊船をイメージさせるテーマパークのような内装が非日常感を演出する。それだけではない。オフィスを「SHIP(シップ)」と呼び、社員を「CREW(クルー)」と呼ぶ徹底ぶりに加え、無人島でのインターンシップや「宝探しワーク」と銘打った新卒採用イベントなど、斬新な仕掛けを連発して働く人たちや応募者のワクワク感を盛り上げる会社、それがVOYAGE GROUPだ。

 

同社は、Great Place to Work®が選出する「働きがいのある会社」ランキングに2013年からランクインし、2015年、2016年には従業員100-999人のカテゴリーで1位に輝いた。また、業績も右肩上がりだ。2012年には81億3800万円だった売上げが、2015年には177億3000万円に到達。今後も年率20%の成長を目標として事業の拡大を続けている。一見トリッキーにも思える様々な仕掛けが、同社では、しっかりと働きがいの醸成にも、企業としての業績にも、そして人を育てることにも結びついている。その背景にはどのような戦略があるのだろうか?

 

同社が今のようなかたちに生まれ変わるべく、大改革に着手したのが2009年のこと。その中心人物がCCO(Chief Culture Officer:最高文化責任者)である青柳智士氏だ。この耳慣れない肩書きこそがこの改革のキーポイントになっている。

 

「当時は業績こそ伸びていたものの、社内にはどことなく停滞感が漂っていて、我々経営陣にはこのままではマズイという危機感がありました。では何をどう変えるべきか?それを考えていたときに米ザッポス社を視察する機会があり、重要なのは“企業文化”であるという大きなヒントを得たんです」

 

1、2年の短期スパンで成果を求めるなら、必要なのは新卒採用戦略や研修の見直しなどの部分的な改革かもしれない。しかし、「5年、10年先に勝てる企業」をめざすには人事的なアプローチだけでは不十分だ。生き馬の目を抜くインターネット産業において競争優位性を保つために必要なのは、「変化に対応し、新たなビジネスに挑戦し続けられる人」であり、そのような人が育ち、エンゲージメントを高められる「企業文化」を構築することこそが同社にとっての最大のテーマだと青柳氏は考えた。

 

社員がワクワクしながら働いているザッポスのような雰囲気を醸成するには、経営理念、オフィス環境、人事制度など、すべてを貫く大改革が求められる。そこで、青柳氏は宇佐美進典CEOに自ら提案し、CCOというポジションに着任。まずはすべての土台となる経営理念の改革からスタートした。

◇ 社員からのヒアリングを重ね、みんなが共有できる経営理念に

「経営理念に関しては、理念そのものというよりも、理念がもたらす効果に課題がありました。理由は明白で、一部の経営陣だけで決めたものだったので、社員の共感値が低かったんです。ですから、大事なのは決めるプロセスだと考え、社員を巻き込みながら、一人ひとりに『どんな会社にしたいか』をヒアリングして設計をしていきました」

 

「360°スゴイ」という同社のSOUL(創業当時からの想い)、「挑戦し続ける。」「自ら考え、自ら動く。」「本質を追い求める。」「圧倒的スピード。」「仲間と事を成す。」「すべてに楽しさを。」「真っ直ぐに、誠実に。」「夢と志、そして情熱。」というCREED(価値観)は、このように形成された。このほかにビジョン等は掲げておらず、同社の思想・哲学はこのシンプルなワード群にすべて集約されている。日々の業務においても、人材育成や人材採用においても、クルーは常にこれらの言葉を軸にして行動するという。

 

VOYAGE GROUPがどういう会社であるのかをテキストで表現したのが経営理念なら、空間で表現したのがオフィスデザインだ。デザイナーでもある青柳氏自らが設計を手掛け、大海原での航海をイメージした大胆なオフィスの刷新を進めた。2007年に完成していた「近未来的海賊の隠れ基地」をコンセプトとする社内BAR「AJITO」を象徴に、オフィス全体が大きく生まれ変わった。

 

その次に着手したのが経営理念に基づいた人事領域の見直しだ。採用に関しては、エントリーシートやSPIなど他社と同じ手法は使わず、前述の「宝探しワーク」など、いきなり同社の職場環境や、人、理念に触れられる機会を設け、合うか合わないかは応募者に判断してもらうという方法を採った。

 

「経営理念を浸透させるには採用の機会を利用するのがいちばん。宝探しなどのイベントに関しても、その背景にあるコンセプトはしっかりと伝えています。採用には約半数のクルーが関わっており、応募者は10人、20人のクルーと会うので、理念に嘘がないことも実感できる。また、会社を知ってもらう数々の仕掛けのなかで、クルーは応募者を喜ばせ、ファンにするために頑張り、学生たちはクルーに憧れ、慕うという関係が生まれる。この採用活動自体が経営理念を体現しているんです」

 

~後編へ続く~

 

構成/伊藤敬太郎 


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