第7回 株式会社日本レーザー 

リストラは絶対にしない! 生涯雇用と実力主義を

両立させる「新しい日本型経営」(前編)

1968年設立のレーザー専門商社。1993年に3年連続の赤字で債務超過に陥り、近藤宣之現社長が経営の立て直しのために本社から出向。「リストラは絶対にしない」と宣言すると同時に、粗利管理の導入などの業務改善を徹底して行い、就任1年目で黒字転換に成功した。翌年、親会社の取締役を退任し、背水の陣で臨んだ結果、2年目で累積赤字を一掃して復配に成功。現在に至るまで22年連続で黒字経営を維持している。2007年には国内では異例のMEBO(経営陣と従業員が参加する企業買収)により、親会社から独立。社員第一主義の経営は社外からも高く評価され、「第1回 日本でいちばん大切にしたい会社大賞(中小企業庁長官賞)」、経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」など表彰歴も多数。従業員数は60人(2016年1月現在)。

◇ 従業員参加のMEBOで本社から独立!本物の「社員のため」の会社に

「社員の成長が会社の成長です」「お客様満足より社員満足が第一です」──いずれも株式会社日本レーザーのクレド(価値観と信念、行動規範)にある言葉だ。同社はこのクレドに則った「人を大切にする経営」を実践し、かつ利益も伸ばしている。

 

象徴的なのが2007年の独立劇だ。「親会社に口出しされ続ける限り、本当の意味で社員のための経営はできないし、甘えも出てしまう」と考えた近藤社長は、経営陣だけでなく従業員も参加したMEBO(Management and Employee Buyout)という手法で自社株を買収。大手企業の子会社という立場から脱却し、日本レーザーを文字通り「社員のための会社」にした。以来、新しく入社したメンバーも含め、正社員と嘱託契約社員全員が同社の株主となっている。まず社員が満足できる企業であってこそ、顧客の満足を実現することができる。ステークホルダーはすべて大切だが、そこには優先順位があってしかるべきだというのが近藤社長の考え方だ。

 

このような経営の原点には、「企業の存在意義とは何か?」という問いがある。 「よく『イノベーションを実現し、新しい価値を生み出していくこと』が企業経営の目的のように言われますが、本当にそうでしょうか。それは目的ではなく手段ではないのか?社員を犠牲にして新しい価値やそれにともなう利益を生み出すことに何の意味があるのか?そう考えていくと、結局、企業経営の究極の目的は『人を雇用すること』なんです。さらにもう一つの存在意義が、『仕事を通じて社員に“人間として”成長してもらうこと』です」

 

しかし、終身雇用と年功序列がセットになったかつての日本型経営では、今の厳しい競争下で生き残っていくことは難しい。もちろん、利益確保のためにリストラをするような経営は企業の本分にもとる。そこで、近藤社長が追求するのが「新しい日本型経営」だ。

 

「『社員を大切にすること』と『甘やかすこと』はイコールではありません。当社はある面では実力主義に基づく徹底した競争社会。生涯雇用で社員を守る一方で、社員にも成長することを求めます。会社から社員をクビにすることはありませんが、そのやり方について来られないなら辞めるのは自由です」

◇ 雇用形態、性別、国籍を問わない公平評価で実力主義を徹底

では、日本レーザーではどのようにして、「社員第一主義」と「徹底した実力主義」を両立しているのだろうか?その要諦は、公平で透明な評価システムにある。

 

同社では、雇用形態、性別、国籍を問わず同じ評価制度を採用しており、評価に際して「パート社員だから」「女性だから」「外国人だから」といったバイアスがかかることも一切ない。その結果、同社の幹部・管理職に占める女性の割合は3割以上。派遣社員から経理課長になった女性、中途採用で事務職として入社し、仕事ぶりが認められて現在は経営幹部となっている女性、管理職として活躍する中国籍から帰化した女性などもいる。その評価のポイントは、「能力」「成果」そして「理念の体現度」だ。

 

「能力」はそれぞれの仕事に必要とされる「実務能力」と、コミュニケーション能力などの「基礎能力」とに分けて評価。この基礎能力に関して、評価の尺度の一つとして重視されているのがTOEIC®だ。

 

前提となるのが徹底した情報開示だ。同社では、月次の決算、予算、各現場の利益率、さらに各営業担当の目標など、経営に関わるあらゆる数値を全社員にオープンにしている。

 

「当社のようなグローバル企業では、英語のリスニング力、リーディング力は英語の情報を得るために必要不可欠。ですから情報収集能力の目安としてTOEIC®スコアは重視しています。また、TOEIC®で高得点を得るには、単に英語ができるだけでなく、集中力、注意力、判断力、情報処理能力、タイムマネジメント能力などが総合的に求められる。これらはいずれも、ポジションが上がるほど仕事でも重要になる能力です。ですから、主任・係長は600点、副課長・課長昇進は700点、次長・部長・執行役員クラスは800点を条件としています」

 

TOEIC®スコアが伸びなければ昇進も昇給もない。その代わり、努力してスコアを伸ばせば雇用形態に関係なく平等に評価される。このシンプルなルールがメンバーのモチベーションを高め、現在女性の平均は770点、男性の平均は700点にまでアップ。また、800点以上の社員が4割を占めている。最高は985点の男女の社員2名。一方、このような人材育成を実現するには採用も大きなポイントだ。さくら住宅では入口の段階で自社に合う人材を丁寧に選んでいるという。一貫した理念のもと、採用と育成をセットで考えることも、企業経営にとっては重要なテーマであると改めて認識した。

 

~後編へ続く~

 

構成/伊藤敬太郎 


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