第6回 株式会社さくら住宅 

ボーナスも採用も決めるのは社員!礼儀や感謝を教え、

経営情報を開示すれば人は育つ(後編)

神奈川県南西部に展開する地域密着型リフォーム会社(本社:横浜市)。1997年、二宮生憲社長が大手住宅メーカーから独立し、福田千恵子常務らとともに創業。「社員とその家族」「仕入先、協力業者」「顧客(現在顧客・未来顧客)」「地域住民」「株主、出資者」の五方良し経営を徹底しつつ、18期連続の黒字決算を続けている。2015年には経済産業省「先進的なリフォーム事業者表彰」、さらに同年「第5回 日本でいちばん大切にしたい会社大賞(審査委員会特別賞)」を受賞。同社の経営は『日本でいちばん大切にしたい会社5』(坂本光司著/あさ出版)でも紹介されている。従業員数は44人、うち社員数は32人(2016年3月現在)。

◇ 各自が仕事への考え方を見直す機会にもなっている全体会議

月に1回行われる全体会議は、月次決算を受けて全社員で議論する場であると同時に、日々の仕事を振り返る場にもなっている。毎回社長から「どうしたらお客様の心をつかめるか?」などのテーマが提示され、全員が自分なりの考えを文章にまとめる。それをその場で当てられた数人が発表をする。ただ読み上げるだけではなく、内容次第では厳しい意見が飛ぶことも。自分の仕事について、常に、真剣に考えることが求められる環境なのだ。

 

「そのほか、毎週金曜日には社員4人ずつがローテーションで社長とランチをとっていますし、それ以外にも社長がオフィス内で気軽に声を掛けるので、社長とコミュニケーションする機会が非常に多いのも当社の特徴ですね。そのような日々の積み重ねの中で、社長の考え方が社員に浸透していくんです」(福田常務)

 

入社後の169時間の研修、毎朝行われる顧客対応のロールプレイなど、社員教育に関しては福田常務が中心になって取り組んでいる。ここでも大切にしているのは、知識や技術ではなく人間教育だ。

 

「それこそお茶の入れ方から指導します。昨年度からは座禅もプログラムに加えました。最近は家庭や学校で基本的な礼儀作法について教わっていない子が多いですから、基礎的な人間教育も社会の公器である会社の役割だと考えています」(福田常務)

 

さくら住宅では、創業以来、顧客からのクレームはゼロだという。トラブルが起きやすいリフォーム業界ではこれも異例のことだ。この事実は、18期連続の黒字決算という数字以上に、同社の経営や人材育成の「正しさ」を証明しているといえるだろう。

◇ 前川孝雄の取材後記

徹底した「情報開示」で「当事者意識」が育まれる

さくら住宅の人材育成のキーワードとなるのは「情報開示」による「当事者意識の醸成」だ。一般的に、経営に関する情報は階層が下に行くほど開示されない部分が多くなる。そのため、自分の努力がどんな成果に結びついているかがわからない社員は、企業活動の厳しさを知ることができず、危機感も持つこともできない。時として“やらされ感”を抱くようにもなる。

 

さくら住宅はこれとまったく逆の状況を意図的に生み出すことで、自律的・主体的に考え、行動する社員を育てている。つまり、お給料は社長が出してくれているのではなく、自分を含めた社員全員の努力にお客さまが支払ってくれた対価から出ていると実感できるのだ。二宮社長は「知識は問わない」と話しているが、同社の新卒入社、未経験入社組には、入社後、二級建築士やインテリアコーディネーターなどの資格を取得した社員も非常に多いという。必然に気づき、自ら学ぶ意識が根付いている証だろう。

 

また、私たちFeelWorksでは、「任せる」=「任される」関係こそが、社員の成長の第一歩になると提唱しているが、その点でも理想的な信頼関係が築かれている。

 

一方、このような人材育成を実現するには採用も大きなポイントだ。さくら住宅では入口の段階で自社に合う人材を丁寧に選んでいるという。一貫した理念のもと、採用と育成をセットで考えることも、企業経営にとっては重要なテーマであると改めて認識した。

 

構成/伊藤敬太郎


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