第5回 株式会社さくら住宅 

ボーナスも採用も決めるのは社員!礼儀や感謝を教え、

経営情報を開示すれば人は育つ(前編)

神奈川県南西部に展開する地域密着型リフォーム会社(本社:横浜市)。1997年、二宮生憲社長が大手住宅メーカーから独立し、福田千恵子常務らとともに創業。「社員とその家族」「仕入先、協力業者」「顧客(現在顧客・未来顧客)」「地域住民」「株主、出資者」の五方良し経営を徹底しつつ、18期連続の黒字決算を続けている。2015年には経済産業省「先進的なリフォーム事業者表彰」、さらに同年「第5回 日本でいちばん大切にしたい会社大賞(審査委員会特別賞)」を受賞。同社の経営は『日本でいちばん大切にしたい会社5』(坂本光司著/あさ出版)でも紹介されている。従業員数は44人、うち社員数は32人(2016年3月現在)。

◇ “社員第一主義”あってこそ、お客様に満足を提供できる

株式会社さくら住宅は、リフォーム業界では異色ともいえる経営方針を貫き、成長を続けている会社だ。

 

 例えば、同社では年間約1800件の工事を手掛けるが、その4割は多くのリフォーム会社が見向きもしない5万円以下の小規模工事である。数千円の雨樋の補修であっても、顧客が困っていれば駆けつける。一方で、常に適正価格を提示し、値引きには一切応じない。顧客が筋の通らない要求をしてきたときは、「自分たちの顧客ではない」と判断し、きっぱりと依頼を断る。

 

「私たちは顧客第一主義ではありません。社員第一主義です」

 

顧客も社員も取引先も地域住民も株主も等しく大切にし、それぞれと対等な信頼関係を築いていく。これが二宮生憲社長(写真)の経営哲学だ。とりわけ「社員が働くことに満足できないで、お客様に満足を提供できるのか?」という強い思いがある。だから、目先の利益のために顧客の無理な要求を呑んで社員を苦しめることはしない。「会社は社会の公器である」という考えのもと、みんなが幸せになるためにはどうすればいいかを二宮社長は考え、実践している。

 

この五方良し経営を象徴するのが同社の「お客様株主制度」であり、「全社員株主制度」だ。同社の株主の66%が顧客であり、新入社員を除く社員全員も同社の株を持っている。社長の保有率は20%に過ぎない。非上場の中小企業としては異例だ。

◇ 大切なのは知識や技術ではなく“人として正しくあること”

そして、ここが大きなポイントだが、さくら住宅は理想を追求する一方で、着実に利益を伸ばし続けている。少額の受注でも誠実に対応することで、顧客の信頼を得、後々同じ顧客から1000万円を超える大きな工事を依頼されることも多いのだという。さくら住宅では、ご縁あったお客様すべてに、社員一人ひとりが手書きで感謝の手紙を書くことを徹底している。つまり、顧客の信頼を勝ち取っているのは一人ひとりの社員。つまり、同社の最大の財産は“人”なのだ。

 

「リフォーム業界は、キッチンにしても建材にしても次々に新しい製品が生まれてくる世界。いくら覚えても覚えきれません。だから、社員には完璧な知識は求めていないんです。知らないことは『わかりません。調べてきます』と言って帰ってくればいい。それよりも、嘘をつかないこと、卑怯な真似をしないこと、一生懸命にやること、そして礼儀。人として正しくあることを何よりも大切にしています」(二宮社長)

 

そのため、さくら住宅では、社員間の競争を煽ることは決してしない。年功序列の給与体系をとっており、営業担当者には目標はあってもノルマはない。お互いに助け合い、チームワークを大事にして働くという考え方が浸透している。そして、一生懸命働いてくれる社員に報いるため、ボーナスは年4回(一時金も加えれば年5回)。入社5年目で600万円という年収例もある。

◇ 月次の決算をはじめとする財務情報・経営情報をオープンに

では、そんな“人間教育”に基礎を置くさくら住宅ではどのように人材育成に取り組んでいるのだろうか?

 

前提となるのが徹底した情報開示だ。同社では、月次の決算、予算、各現場の利益率、さらに各営業担当の目標など、経営に関わるあらゆる数値を全社員にオープンにしている。

 

「『ボーナスの額を決めるのは私じゃない、あなたたちですよ』と社員にはいつも言っています。ボーナスはそのときの業績次第ですし、業績が上がるも下がるも社員次第。だから、みんな決算の数字を見て『今期は売上げが厳しいな。もっと頑張らないと』『○○さんは目標達成が難しそうだ。みんなでフォローしよう』と自分たちで考え、行動しています」(二宮社長)

 

新人研修で決算書の見方を教えていることもあって、社員一人ひとりが、自分に関係することとして財務情報などに関心を持つようになる。必然的に経営者的な視点が養われ、社員の自律性・主体性が高まっていく。

 

同時に、社員に「任せる」姿勢も徹底している。現場の業務や顧客との交渉だけではなく、経営判断に関わる事柄まで社員に当事者として考えてもらうというのだ。

 

「例えば、次年度の新卒採用をするかどうかは、前年度に入社した新人たちに考えてもらいます。『キミたちが後輩を必要とするなら採るし、必要ないなら採らない。どうする?』と。最初は自分のことで手一杯なので『教育に割く時間がないから要らないです』と言うんです。しかし、仕事にある程度自信がついてくると、『来年度から店舗展開が変わるので人手が必要。採用してください』と意見が変わる。当事者として考えることが彼らを成長させているんです」(二宮社長)

 

なお、さくら住宅が新卒採用を始めて5年になる。面接は、社長や福田千恵子常務(写真右)らに加え、若手も担当するという。

 

「現場に同行して新人の教育を担当するのは一つ上の先輩の役割。彼らにとっては、自分たちが『一緒に働きたい』と思って採用した新人ですから、責任感を持って育てます。人に言うからには自分ができていないといけません。後輩の指導を通して、みんな成長していきますね」(福田常務)

 

~後編へ続く~

 

構成/伊藤敬太郎


03-6206-2771

お問い合わせはこちら

下記の入力フォームに必要事項をご記入の上、お気軽にお問い合わせください。後ほど当社担当者よりご連絡させていただきます。

 

お急ぎの場合は

Tel.03-6206-2771 (受付 平日 10時~18時)までお電話ください。


メモ: * は入力必須項目です