第31回 トラスコ中山株式会社

ベテラン、管理職でも異動・降職あり!公平公正な人事制度、「取捨善択」の理念を鍛える研修で自律型社員を育成(後編)

「がんばれ!!日本のモノづくり」をスローガンに、工具や作業用品、消耗品、機械類など工場や建設現場などで使われるプロツールを扱う商社。1959年、大阪市天王寺区で創業。1994年に現経営者の中山哲也氏が代表取締役社長に就任し、2014年には東京都港区に本店を移転。全国に98か所の拠点があり(内50か所は物流拠点)、取り扱いアイテムは2017年3月末時点で約149万点。かつ毎年約3万点のペースで新規取扱商品を増やしている。人材開発に関する新しい取り組みも積極的に進めており、厚生労働省が主催する「グッドキャリア企業アワード2017」ではイノベーション賞を受賞。2018年4月時点の従業員数は2561人(正社員1523人、パート1038人)。女性社員数も年々増えており、現在の男女比は2:1。2017年の売上高は1950億9600万円で、2011年以降右肩上がりの上昇を続けている。

◇前川孝雄の取材後記

自律型社員の育成に近道なし。人事制度や研修、OJTなどすべて終始一貫して内発的動機づけにこだわり続けること

働く人たちが多様化し、働き方改革が求められる昨今。柔軟な働き方と成果や生産性向上を両立させる経営観点からも、人生100年時代となり一人ひとりのキャリア開発観点からも、「自律」が重要なキーワードになっている。

 

そのため、多くの企業が自律型社員を求め、その育成に取り組んではいる。しかし、思うような成果が上がっている企業は少ない。特に大企業の場合は、体に染みついてしまった組織に依存するサラリーマン体質を1回、2回の研修で変えられるものではない。ましてやトップが形だけのメッセージを発したところで社員のハートには届かない。そこでトラスコ中山の終始一貫した人材育成のあり方は大いに参考になるはずだ。

 

「自覚に勝る教育なし」「自考自得」。これがトラスコ中山の人材育成に関する基本的な考え方であり、トップ、管理職から実践し続ける姿勢に私自身、強く共感した。

 

トラスコ中山が優れている点の一つは、聖域を設けない人事異動・ジョブローテーションを横軸、OJSに基づく公平公正な昇格降職制度を縦軸として、全社員に常に成長を求める仕組みを確立していることだ。このような組織においては、社員は自らの成長に関して自分自身で責任を持たなければならない。それこそが自覚、自律だ。

 

もう一つは、社内の事例を取り上げたケーススタディを通して、「自分ならどうするか」を考える研修が豊富に設けられていること。管理職となっても、自覚し直す機会がいくつもあり、それぞれが全階層にとっての成長の機会となっている。

 

社会心理学者エドワード・デシが指摘している通り、人が自律的に行動する際に重要なのは、自分自身が「こうしたい」と思う内発的動機づけだ。自律と内発的動機づけは表裏一体である。上からいくら「変われ」と命令しても人は変わらない。トラスコ中山の一連の施策はまさにこの内発的動機づけにフォーカスしているといえるだろう。それをトップの強力なメッセージのもとで徹底して実践している。そこで重要となるのが、上司と部下との日々のコミュニケーションであるという点も、私たちFeelWorksが主張してきたことと合致する。

 

なお、改革の過程で、社内で実際にあった現場からの人事部門への要望やクレームをケーススタディの素材として利用するアイデアはユニークかつ実用的だ。課題も答えも現場に埋もれている。これほど、身につまされる教材はほかにないだろう。企業の人材育成担当者のみなさんには是非取り入れてみてほしい。

 

構成/伊藤敬太郎

 


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