第3回 ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ株式会社 

社員がやりたくない仕事は断る!新人も講師役に!全員で挑戦し学び合う「教育→実践→評価」を仕組み化し、組織を強くする(中編)

ファシリテーション型コンサルティングにより顧客の業務改革を実現するITコンサルティング会社。本社は米国マサチューセッツ州ケンブリッジで1991年に誕生。1997年、日本法人設立。2006年、日本ユニシスの完全子会社化。Fast(迅速に)、Right(正しく)、Open(オープンに)、Guaranteed(成果を保証)、Business Case(お客様のビジネス中心)、Behavioral Focus(誠実に)の頭文字をとったFROGBB(フロッグビービー)を掲げ、スピーディで質の高い独自のコンサルティングサービスを提供。95.6%という高いプロジェクト成功率を誇る。2016年8月現在、社員数は102人。人事マネージャーの影山明氏は、著書に『プロジェクトを変える12の知恵─ケンブリッジ式ファシリテーション─』(日経BP社)がある。

◇ 心を込めてダメ出しする!大切なのは日々のフィードバック

また、評価に関する取り組みも徹底している。

 

「会社とは自己実現の場です。自己実現というのは、自分がやった仕事や振る舞いに対してさまざまなフィードバックを周囲から得ることによって実感できる。私たちはそれこそが働きがいの本質だと考えています」

 

基本となるのは、日々の顧客とのセッションごとに行われるフィードバックだ。セッション後には必ず、参加した顧客からその日の内容について意見をもらい、メンバー同士でも良かった点、改善すべき点をフィードバックし合う。「心を込めてダメ出しする」というのも同社のメンバーが共有しているポリシーの一つだ。

 

さらに、3カ月に1回、プロジェクトマネージャーがメンバーに対して、プロジェクトレビューというかたちで日々のフィードバックを総括した評価を書面にして渡す。総合評価に加え、品質、生産性、振る舞い、人材育成といった項目に関しても詳細なコメントを書き込み、多岐にわたるコンピテンシーに関しても一つひとつ丁寧に評価をしていく。ここでは日々のフィードバックで指摘していないことは新たに盛り込まないのがルール。言うべきことがあれば常にその場で伝える。プロジェクトレビューはあくまでそのまとめなのだ。

 

「このプロジェクトレビューを1年分集めると年次評価になります。年次評価は経営メンバーが1カ月程度の間、週何日か缶詰になって全社員分について行います。評価基準も常にブラッシュアップしているので、この場が新しい評価基準を作り出し、すり合わせる機会にもなっています」

 

マネージャーや経営陣にとっては負荷の大きい仕組みだが、ケンブリッジではそれだけ社員を動機付けるための評価を重視しているということだ。

◇ 社内のノウハウ強化も顧客満足強化も本質的な方法論は同じ

このように、同社では、「教える・学ぶ」→「実践」→「実感」→「磨く」→「教える・学ぶ」…という、社内のノウハウ強化のループが常にフル回転している。このループこそが社員の働きがいを醸成する仕掛けになっており、人材育成の肝にもなっている。

 

もう一つのポイントは、このループが同社のサービスにも通じていることだ。同社の顧客満足強化のループは「ノウハウをオープン」→「喜ばれる」→「(顧客が)ファンになる」→「磨く」→「ノウハウをオープン」…というかたちで示すことができる。「実感」=「ファンになる」というフェーズが意味するのは、人の感情に働きかけることの重要性だ。方法論の追求においても、人材育成においても、顧客サービスにおいても、「人を動かす」ための仕組みは基本的に同じなのである。

 

「現在は一連の取り組みが成果につながっている」と話す影山氏。しかし、ここに至るまでには、会社として紆余曲折もあったという。

 

「日本法人設立後、一時は100人ほどの組織に成長したのですが、ITバブルの崩壊による売上げ減、ソフトウェア会社による買収があり、同時期に中途採用したコンサルタントが増えて社内のカルチャーも崩壊しかかったことで、社員数は30人程度にまで減ってしまったんです。このままではダメだということで、2006年、残ったメンバーで“ケンブリッジ2.0キックオフ”と銘打って徹底的に議論をしました」

 

月2日のトレーニング日など、現在も続いている制度やルールにはこの議論から生まれたものも多いという。ケンブリッジ2.0キックオフをきっかけに当時の親会社からコンサルタントメンバーだけでスピンアウトし、日本ユニシスの子会社となって再出発。その後は人とカルチャーを大事にする風土を徹底して守っている。

◇ カルチャーの共有が主体的に動く社員を育て、組織を成長させる

ただし、「ケンブリッジ2.0キックオフは一つの象徴に過ぎません」と影山氏。当時も、残ったメンバーは苦境にありながら、親会社からの「自社製品を売るように」というプレッシャーに抵抗し、ケンブリッジの良さを貫こうとしていた。つまり、創業当初からのケンブリッジ独自のカルチャーは、崩壊しかかったように見えながら、実はメンバーのハートの中に脈々と生き続けていたのだ。

 

「『お客様にとって正しいことをする』などの米国本社が掲げたケンブリッジのカルチャーは、日本法人ではより純粋なかたちの結晶になりました。このカルチャーに共鳴したメンバーが集まっていたからこそ、2006年当時もケンブリッジのビジネスとブランドを守っていこうという気持ちが生まれたのだと思っています」

 

ケンブリッジ2.0キックオフでは、このカルチャーをベースに、現在の同社を象徴する新たなマネジメント方針も生まれた。影山氏はそれをシンプルに「社員>お客様≫株主」と表現する。

 

「この会社は社員のためにある。社員のために、社員が良い仕事ができる会社を作ることが、結果としてお客様に良いサービスを提供することにつながり、それが結果として株主に還元されるのだという信念を私たちは持っているんです」

 

企業経営は、ときに時代の荒波にさらされることもあれば、ときに強烈な逆風が吹くこともある。そんなときにも力になるのは、守るべき“カルチャー”であり、それを受け継ぎ、体現する“人”なのだ。ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズの強さはまさにそこにあるといえるだろう。

 

~後編へ続く~

 

構成/伊藤敬太郎


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