第19回 株式会社高齢社

82歳でも現役!元気だから働くのではなく、働くから元気になる、

シニアに特化した人材派遣事業で定年退職後の働きがいを創出(後編)

東京ガスを退職した上田研二氏(現・高齢社最高顧問)が、2000年1月4日に創業したシニア専門の人材派遣会社。登録スタッフの募集条件は原則60歳以上75歳未満で、定年はない。請け負う業務は、ガス設備の保守・メンテナンスなどガス関連が多いが、最近では、マンションの管理人など、それ以外の領域にも幅が広がってきている。本社スタッフも嘱託で働くシニア層が中心だ。緒形憲社長は東京ガス、子会社社長を経て、65歳で定年退職後、高齢社に入社。2016年6月末から現職。2016年11月末現在、就労中・待機中の派遣社員数は789人、平均年齢は69.7歳、就労率は34.9%。本社スタッフは24人。働く人優先での経営を徹底するため、企業との資本関係はない。グループ会社に、同じくシニアが家事代行サービスを提供する株式会社かじワンがある。

◇ 前川孝雄の取材後記

人生100年時代。40代から「適材適所」の場をつかみ取る「自己分析」の習慣を

今回の高齢社の取材を通して感じたことは「適材適所」の重要性だ。人は、自分が求められている場で、自分の強みや持ち味が活かせる仕事を得られれば、働きがいが高まる。そこに年齢は関係ない。

 

取材前は、高齢社ではシニア層の活躍に向けて細やかなモチベーションアップのための取り組みを続けているのではないかと先入観を持っていたが、そうではなかった。働く人の都合や希望を優先して、ふさわしい場と仕事を提供する。根本的にはそれに尽きるのである。

 

もし、定年後再雇用などでシニア層を抱える企業がマネジメントの問題を抱えているとしたら、その要因は、待遇面や条件面の変更と説明に腐心する一方で、「適材適所」を軽視していることにあるのかもしれない。

 

一方で「適材適所」をつかみ取るためには、働く個人側にはキャリア自律のための「自己分析」が欠かせない。しかし長く組織の中で働き続けながら、この習慣を持つことは容易ではない。

 

40年以上働き続けてきた人たちにとって、定年退職で仕事を離れることは心理的にもキャリアショックが大きいが、だからこそ気持ちをリセットする機会にもなるものだ。ただでさえ、人生100年といわれるほど長寿化が進む現代。60歳や65歳で定年退職するとしても、まだ20年以上働くことが視野に入ってきている。ベストセラー『LIFE SHIFT』でロンドン・ビジネススクールのリンダ・グラットン教授も指摘しているが、シニア層の働き方を考えるにあたり、同じ組織の中で過去の延長で働き続けることが果たしていいことなのかどうか。これも改めて考えさせられた点である。

 

この気持ちのリセットは、シニアにとって市場価値を意識した「自己分析」のチャンスにもなっている。「今の自分がどのように社会の役に立てるだろうか」と問い直す機会は、組織の中で受け身のままでキャリアを重ねてしまうと持ちにくい。組織内のポジションや社内のみで通用する経験値がすべてになってしまい、それが自分の市場価値だと錯覚してしまうからだ。しかし、いったん外に出れば、過去のポジションなど役に立たなくなってしまうことのほうが多い。実際そこが働き続けるうえでネックになることもよくある。

 

定年後も働き続ける時代だからこそ、定年後を見据えた、できるだけ早い段階からの「自己分析」が求められている。今の30代くらいまでの世代は、就活での必要性から「自己分析」に慣れ親しんできた場合が多い。しかし、会社に滅私奉公することを是としてきた40代以降の世代、特に社内で業務が完結しがちな大企業勤務者はこれができていない場合が多い。40代くらいからは、節目節目で社外の視点から見た「自己分析」をすることをお薦めしたい。

 

高齢社の事業は、今後日本がシニア層の雇用を拡大していく中での一つの指針を示すものだが、この動きを国としてバックアップするには、現状の画一的な労働法制の見直しも必要になってくるだろう。取材中に緒形社長がおっしゃっていたことだが、週3日勤務のシニアに有給休暇が必要なのか、すでに年金受給者である人たちに若手と同様の社会保障制度を当て嵌めることが適切なのかといった疑問は確かに一理ある。

 

もちろん守られるべきものは守られるべきだが、働く人の多様化に合わせて法制度も多様化するのが自然だ。現状の法制度に、シニア層の活躍に前向きな企業の足を引っ張る面があるのなら、改革が求められるだろう。

 

構成/伊藤敬太郎


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