第34回 株式会社アレックスソリューションズ

社員の国籍は20カ国近く。「バックパッカー精神」あふれる留学生を

世界的企業から引き抜かれるITエンジニアへ育成(後編)

語学力に長けたITエンジニアを育成し、顧客企業に常駐して海外企業との橋渡し役を担うグローバルエンジニアリング事業、および顧客企業の海外進出をサポートする海外研修事業で成長を続けるIT企業。代表取締役CEOの大野雅宏氏が同社を設立したのは2007年。当初から「留学生を活かす」を経営理念として掲げ、留学経験者や海外経験者、日本に留学してきた外国人に絞って社員を採用することで、独自の強みを伸ばしてきた。東京港区の本社のほか、シンガポール、スリランカにもオフィスを持つ。2018年5月時点での社員数は153人。社員の国籍は、日本、アメリカ、韓国、中国、インド、スリランカ、ネパール、ブラジル、 ナイジェリア、イギリス、フランス、シンガポール、ベトナム、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ドイツ、ミャンマーと実に多様。

◇前川孝雄の取材後記

くすぶっていた人材を採用、経験・スキルの掛け算で育成、成長しても囲い込まない。

逆転の発想で企業も成長する

少子高齢化が進むこの国では、企業は労働力不足に悩み、女性やシニアの活用にも力を入れるようになっている。しかし、実は潜在的な能力はあるのに、企業側が活かし切れていない層はまだまだいる。そこに目をつけたのがアレックスソリューションズの大野代表だ。

 

多くの企業がグローバル化を標榜する昨今、4年制大学への正規の留学であればグローバル人材としては魅力的だろうが、新卒採用が売り手市場化しているなかで、そういった人材は希少でなかなか採用できない。そこで、若手社員にグローバルマインドセットのための研修を受講させ意識変革を促すものの、そもそも国内のローカル志向・保守志向が強い人たちを海外のグローバル志向・変革志向に変えることは容易ではない。そもそもそういう意識で就職したわけではない、とモチベーションダウンや早期離職を招くリスクすら抱えてしまう。

 

これだけ企業がグローバル経営の推進に四苦八苦しているにも関わらず、採用時にワーキングホリデーやバックパッカーとしての海外経験を評価する視点は、まだ少ない。ともすれば、フリーターや就職失敗の烙印を押して選考に乗せないという企業も多いはずだ。

 

しかし、バイタリティや活きた語学力など、彼らが日本の常識が通用しない海外で培ったタフな力は十分ビジネスで通用する。「いい人がいない」という企業の声はよく耳にするが、実は保守化してきた社風から固定観念にとらわれ、磨けば光る人材を発掘できていないだけなのかもしれないことを、アレックスソリューションズの採用戦略は証明してくれているようにも感じた。

 

また、人材育成の面でも同社の取り組みは秀逸だ。そもそも知識やスキルは採用してから習得させることは難しくない。でも、そもそものマインドを変えることは相当難度が高く時間もかかる。変革が求められ、グローバル経営を進めるうえで活躍できる人材には、正解がないなかでも自分で考え自分で行動できる自律的なマインドが必須だ。同社が求めるバックパッカー精神がまさにこのマインドにあたり、その採用基準をクリアした人材のみ採用しているため、内定者にはビジネスマナーやITを教え、さらには語学力を鍛え直す、という知識やスキルの習得のみさせれば通用するという考え方は理にかなっている。

 

またその知識・スキルにおいても、「語学力・海外経験×ITスキル」という掛け算によって、それまで正当に評価されることのなかった人材を希少価値のある人材に生まれ変わらせているところにも注目したい。一つひとつの知識やスキルは普通であっても、掛け算によって社会的ニーズの高い希少な価値に変換させているのである。この掛け算は、人材の短所にこだわるのではなく、長所を最大限に活かす発想からも生まれている。まさに私たちFeelWorksが提唱するダイバーシティマネジメントの理想的な実践例だ。

働く人の多様化、グローバル化が進むなかで、旧来の「組織ありき」のマネジメントは限界を迎えつつある。そんななかで、アレックスソリューションズが実践しているのは「個人のキャリア」を尊重する経営・マネジメントだ。

 

個人のキャリアを尊重するということは、働きやすい環境を整え、甘えを助長することではない。むしろハードな環境で厳しく鍛えられる機会の提供ととらえたほうがよい。ただ、その機会に身を置くことに個人の意思や希望が反映されており、厳しさが逆に働きがいに通ずるという構図である。

 

そこでは、個人が自分のキャリアをどのようにしていきたいかを自分自身で考え、行動する。

例えば、同社はこれまでシンガポールやスリランカにオフィスを構え、今後はイスラエルでの事業展開も視野に入れているというが、これらはすべて手を挙げた社員をまず一人で現地に送り込み、すべてゼロから自分で立ち上げさせることにしているという。

 

会社は機会を提供し、支援をする。しかし、その機会を活かし自分を成長させるのは、あくまで社員自身である。主体的・自律的な意識を持つ社員をさらに伸ばしていく仕組みによって、社員と会社との間には、お互いにWin-Winの対等な関係が築かれている。

 

キャリアアップのために会社を出て行くことも自由。そして辞めた後も、個人と会社は新しい形で関係を深め、アレックスソリューションズのネットワークは広がっていく。貴重な人材の成長の可能性を自社の枠組みに抑え込まないことが、逆に自社の発展につながっていく。社員の定着に悩み、副業を解禁するか否かに迷っている大多数の企業から見れば、まさに逆転の発想といえるのではないだろうか。

 

いみじくも、労働力人口に減少に耐え切れず、国も外国人労働者の受け入れに大きく舵をとろうとしているさなか。グローバル化を進める企業のみならず、内需に依存する企業にとっても、アレックスソリューションズは、これからの時代の人を活かす組織のあり方について重要なヒントを示してくれる先駆的な事例といえる。

 

構成/伊藤敬太郎

 


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