第11回 株式会社ランクアップ

残業少なく働きやすいのに、社員が暗い原因は社長にあった!? 

本当の「働く女性の幸せ」実現ドキュメント(前編)

2005年、広告代理店を退職した岩崎裕美子社長が「自分が本当に欲しい化粧品を作りたい」との思いを抱いて創業。「美容液で化粧を落とす」という業界の常識を覆す発想から生まれた感動化粧品マナラ「ホットクレンジングゲル」は発売から10年で600万本を売り上げる大ヒット商品となり、会社全体の売上高も11期連続で上昇中。第11期は75億円に達した。働くママをサポートする社内制度の充実ぶりでも知られており、2013年には、東京ワークライフバランス「育児・介護休業制度充実部門」認定企業に選出。岩崎社長の経営哲学とランクアップの成長史は著書『ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社』(クロスメディア・パブリッシング)にもまとめられている。社員数は45人(2016年4月現在、アルバイトを含む)。

◇ “仕事が終わったら17時に帰っていいよ制度”など独自の施策を実施

株式会社ランクアップは主力商品である感動化粧品マナラ「ホットクレンジングゲル」で知られる急成長ベンチャー企業。そして「ほとんどの社員が17時に帰る会社」でもある。

 

「女性が幸せに生きる社会を作る、それが私たちのミッションです」

 

岩崎裕美子社長のこの情熱と信念は、健康的に美しさを追求したい女性のための、「実感」と「安心」にこだわった製品づくりに反映されているだけではなく、女性社員のための社内制度の整備にも向けられている。

 

同社は女性社員が大半を占め、現在は半数に当たる20人がワーキングマザーだ。彼女たちが長く働き続けられるよう、育児休業制度はもちろん、2時間休・3時間休などの時間休、子どものための看護休暇、自己負担300円で利用できる病児シッター制度など多彩な子育て支援制度を導入。そのほかにも、ワークライフバランス、健康、成長などの観点から幅広く社員を支える環境整備を実践している。

 

同時に、業務の棚卸しや効率化、アウトソーシングの活用、ルーティンワークのシステム化、残業している社員への声かけなどを強力に推進。とどめに、仕事が片付けば定時30分前の17時に帰ってもオッケーという“仕事が終わったら17時に帰っていいよ”制度を導入したことで、本当に「ほとんどの社員が17時に帰る」を実現した。

 

しかし、定時前に帰れるというだけでは、本当の意味での「働く女性の幸せ」は実現できない。どんなに働きやすい環境でも、そこで働きがいや成長を実感することができなければ、男性であれ、女性であれ、次第に不平や不満が募っていくからだ。

 

「2012年頃、この会社は本当に暗かったんです。業績はずっと伸びていましたし、今ほどではないにせよ残業もほとんどありませんでした。しかもオフィスは銀座ですし、何が不満なのかと。でも当時は典型的なワンマン経営だったんです。創業パートナーの日高(取締役)と2人で何でも決めて、社員には決まったことだけを伝えるというやり方でした。社員が何かを提案しても、『このアイデアにはオチがない、つまらない』と詳しい理由も説明せずに否定ばかり。社員の間には『この会社では何を言っても聞いてもらえない』という空気が蔓延していたんです」

◇ 研修で社員の不満が爆発!社長の猛省が会社を変えるきっかけに

その不満は、会社と社員の価値観の統一を図るための研修で一気に爆発する。「会社に貢献できることなんてない」「社長は私たちを認めてくれていない」という声が噴出し、岩崎社長はその場で社員に謝罪。それがきっかけで自身の本質的な誤りに気づいたという。

 

「私や日高はもともと挑戦することが大好きだったんですが、そんな思いも社員まったく知りませんでした。なぜなら伝えていないから。コミュニケーションが決定的に不足していたんですね。だから、会社が暗いのは『社員にやる気がないからだ』と思い込んでいたんです。でも、悪いのは私だった。社員にはやる気があるのに、私がみんなの挑戦の芽を摘んでいたんです。すべての始まりはこの気づきからです。まず自分が変わることで会社を変えていこうと決意しました」

 

岩崎社長が最初に起こしたアクションが「挑戦」という価値観の共有だ。今までも一方的に経営理念や行動規範を掲げてはきたが、このときは繰り返し、しつこいくらいに理由と背景を含めて社員にメッセージを発し続けた。そして、岩崎社長自身もこの価値観にコミットした。自らも新卒採用を始めるなど挑戦する姿を見せ続けることで、半年ほどの間に、最初は戸惑っていた社員の間にも変化の萌芽が生まれ始めたという。最初の成果の一つが、社員発案によるお客様向けイベントだ。

 

「結果は大成功でした。私がやるよりよっぽどよかったですね(笑)。『やればできる人たちばかりなんだ』ということにそのとき改めて気づきました。今は、社員が本気で提案してきたら、『じゃあ、やってみなよ』ということがほとんど。挑戦という価値観でつながることができたので、私も信頼して任せられるようになったんです。私が気にするのは予算のことだけ。ただ、もう社員もその点はわかっていて、費用対効果などしっかり説明できるよう準備してきますね」

 

社員の発案による新事業部も増えていった。広報部が生まれ、テレビショッピング事業部や店舗販売事業部もスタート。1件につき500円を支給する改善提案制度や社内起業制度の導入などもあって、やりたいこと、言いたいことを積極的にアピールする前向きな空気が醸成され、一人ひとりが主体性を持って働く会社へと全体が変わり始めた。「価値観が完全に浸透するまでは、それでも2年程度はかかりましたね。大切なのは言い続けることです」。一人、また一人と挑戦する社員が生まれるなかで、組織の一体感も高まっていったという。

 

~後編へ続く~

 

構成/伊藤敬太郎 


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