第23回 有限会社あきゅらいず

お客様からの支持で人事評価!出社日、勤務時間など働き方は自由に!

人を大切にしながら成果を追う「会社は実験室」(前編)

『美しさを容(かたち)づくるのではなく、美を養うことからはじめよう』をコンセプトに、素材にこだわったスキンケア商品などの企画・開発、通信販売を手掛ける。オフィスは東京都三鷹市。代表取締役の南沢典子氏が化粧品会社に勤務していた当時、より顧客のニーズに沿った商品を作りたいとの思いでスキンケア商品の企画室を立ち上げたのが同社のルーツ。2003年に独立し、有限会社あきゅらいず美養品を創業。質の高い商品と顧客志向のサービスが反響を呼び、全国にファンを増やしていった。働き方改革にも積極的に取り組み、「平成24年度 関東地域における人材戦略ベストプラクティス集~女性の活躍により飛躍する企業~」(関東経済産業局)にも選ばれている。UBU(うぶ)グループとしてほかに5社を擁し、アロマオイルや洗剤の開発・販売、里山保護などの事業も展開。社員数はあきゅらいずが48人、グループ全体で111人(2017年3月現在)。

◇ 働く時間も場所も「自分で決める」が大原則

あきゅらいずは「人を大切にする」ことを基本理念として掲げ、徹底して実践している企業だ。育児中の女性社員なども多いため、早くから働き方改革にも積極的に取り組み、次々に新たな制度も導入している。

 

象徴的な例の一つが1年ほど前に導入した出社日・勤務時間に関する制度。総務から各社員にその月の所定の労働日数と労働時間が伝えられ、どの日に出社し、何時間働くかの配分は社員が自分自身で決めるという斬新なシステムだ。

 

「月~金で9時~17時といった働き方を会社が強いるのではなくて、例えば、『この日は子どもの授業参観があるから午後から出社して、その分この日に少し多めに働こう』というように、部署内で相談しながら自分で調整できる制度です。当社には週2、3日だけ働く人たちもいるのですが、パート、アルバイトだからといって制度面での区分はしていません。所定日数・時間が変わるだけで、全員に同じルールを適用しています」(南沢典子社長)

 

働く時間だけでなく、場所に関しても改革を進めてきた。テレワークはすでに導入済み。職種にもよるが、スタッフと会社間での相談のうえ、オフィス以外の場所で仕事をすることも可能となっている。さらに、地方に移り住むことになった社員から「辞めたくない」と相談があったことがきっかけで、新たにリモートワークのシステムも採り入れた。

 

また、社員の定年後のキャリアにも柔軟に対応している。

 

「定年を迎えた社員に『まだ働きたい』と相談されて、『何ができますか?』と聞いたら、『おいしいご飯を作れます』と言うので、じゃあ、食堂を作ろうという話になって」

 

その結果、生まれたのが社員食堂の「森の食堂」。今では一般の人にも開放しており、地域で暮らすお母さんスタッフが地元の野菜などの素材を活かした美味しい「母めし」を提供している。

 

会社ありきで働き方を決めるのではなく、あくまで人ありき。あきゅらいずは、社員のニーズや事情に対応して、多様な働き方を柔軟に実現している。

 

南沢社長が「人を大切にしないと何も始まらない」と意識するようになったのは創業から3年を経たころだ。強い顧客志向をもつ南沢社長は、それまで社員が自分と同じように顧客を喜ばせるサービスや接客ができていないことに不満をもっていたという。

 

「そのころは、お客様にばかり気持ちが向いていて、社員には『言えばわかるでしょ』『なんでできないの』というスタンスで接していたんです。でも、振り返ると、私自身、会社に勤めていた当時は、会社や上司に冷たくされると、『こんなに頑張っているのに…』という気持になっていたんですよね。つまり、自分がやられて嫌だったことを社員にしてしまっていた(苦笑)。それに気づいてからは、私自身が社員のみんなに感謝の気持ちをしっかり伝えることにしたんです。自分がされて嬉しいことは、みんなお客様にもしてあげたいと思うはずですから」

◇ 「顧客からの支持」も含めて社員の成長を数値化して評価

一度スイッチが入れば、南沢社長はその道の達人だ。例えば、社員の誕生日にメッセージ入りのバースデーカードを送る、毎月の給料日には何かしらのサプライズを添えて給与明細を手渡しするなど、心を込めて、目に見えるかたちで社員への感謝を表現し続けた。

「いちばん大変だったのは、風船の中に給与明細を入れて渡したときですね。給与明細を丸めて細くして風船の中に差し込むんですが、これがなかなかうまくいかなくて(笑)。でも、そのあと、みんなが風船をデスクに飾ってくれて。苦労したかいがありました」

自分に合った働き方を自分で選ぶことができ、かつ長く働き続けられる環境、感謝の気持ちでつながる社長と社員の関係──、働く人にとっては、まさしく理想の職場だ。

ただし、同社は一方で、社員に対して「自立・自律・自率」を求めている。そのため、働き方の選択と同様に、仕事も徹底的に任せる。会社や上司は細かな指示は与えない。社員は自分の裁量で「顧客のために何ができるか」を考え、実行し、その成果が評価される。この自由は、社員にとってはある意味で厳しいものだ。

同社が追求する働きやすさと、このような成果主義は、日本人的な感覚からすると、一見相反するもののようにも思える。しかし、「人を大切にする」とは決してぬるま湯のような居心地の良さを提供することではない。あきゅらいずにとってそれは一人ひとりの主体性を尊重すること。その帰結としての成果主義は、自由な働き方とも決して矛盾はしない。

もちろん、成果主義といっても、一般的にイメージされる短期収益至上主義の成果主義とはひと味もふた味も違う。とにかく一筋縄ではいかない企業なのだ。

「一時期は、社員に自分のお給料を決めてもらう制度を導入していました。社員が自分のライフプランやライフバリューを私たちに説明して、『これを実現するためには、今いくら必要か』を自分で決めるんです。そして、そのお給料に見合う働きをしているかどうかを、これも自分自身で判断するという内容でした。ただ、それだと、売上げの数字をみんなが追い求めるようになってしまい、お客様に迷惑がかかるので、今は、お客様からの支持も含めて、スタッフ一人ひとりのスキルを数値化して、一人ひとりの成長を会社が評価する仕組みにしています。すると、今度は私や役員が一人ひとりの仕事の細かいところまでを見ることができないという問題が出てきたんですね。そこで、今までは経営陣以外はフラットな組織だったんですが、各部門にマネージャーを置き、きめの細かい評価ができるように組織を改めたところなんです」

~中編へ続く~

構成/伊藤敬太郎


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